FM三重『ウィークエンドカフェ』2022年4月30日放送

緑が美しい湯の山街道。
温泉街へと続く道沿いに去年の10月、『NPO法人菰野ピアノ歴史館』がオープンしました。
ここにあるピアノは、代表理事の岩田光義さんのコレクションです。
では、岩田さんに歴史館のことをお聞きしましょう。

アノを収集し始めたのは40年前

40年くらい前からピアノを集めだして、現在40台ほど。
そのうち25台を整備・修復して、その時代の音を奏でることができるようにしてあります。
来館していただいた方に弾いてもらったり聴いてもらったりしているのが現状です。
ピアノの歴史は1720年頃から。
ここにある古いもので1780年〜90年頃。
モーツァルトの晩年、ベートーベン、ショパンの時代の曲が作られたようなもののピアノがたくさん置いてあります。
現代のピアノは精度が良く、表現力が大きくなり、大きな音も出ます。
しかし当時は鍵盤も、現在の基準の88はありませんでいた。
70鍵程度の数であの名曲が作曲されているわけですよ。
音の大きさも表現力も、その当時の音が再現されるということで、楽譜のオリジナルはそこから誕生しているんですね。

 

調

律師であり調律師を養成する学校も設立。卒業生は世界で活躍している

私はずっと生涯調律師で、そういった意味でご縁があってヨーロッパへ行ったり来たりしていました。
ピアノの調律師を養成する専門学校を四十数年前に、名古屋に創設しました。
技術者を養成するという切り口と合わせて、ヨーロッパとコンタクトを取りました。
技術者養成で資格を持った子が、有名なヨーロッパのホールのコンサートチューナーになったり、いろいろなピアノを製造しているメーカーへ就職してピアノづくりに専念しています。
そういった御縁があったので、そういうのを活用しながらみなさんにお見せするようになりました。
今でもそうですが、昔からピアノだけは調律する人が必要なんです。
他の楽器は自分で調整することが多いですが、ピアノは調律師がいないと、ピアニストが満足できません。
ですから、そういう観点から調律師を志願したというか…そんな難しいものではなく、コンサートを聴くのにお金がかかるから、調律師になれば楽屋で無料で聴くことができる…そう考えたのがきっかけだったのは事実です(笑)。
今はちょっと想像もつかないかもしれませんが、そんなことから調律の技術を持てば、間近で聴けたんですね。

 

アノの音は弾く人によって違う。表現力が最大に活かせるように音を作る

ピアノは同じピアノでも弾く人によってとても変わります。
なぜかというと、ピアノは鍵盤を指で叩いて、打つわけです。
鍵盤の延長が人の手と指なんです。
ですから人によって表現力と機能が一対になっているので、変わってくるんです。
最近話題になっているショパン・コンクールでも、みなさんとてもお上手ですが、人によってこ個性が表れるわけなんです。
もちろんその陰には調律師の存在もいます。
ピアノには、そういう面白さがあるんです。
一流の演奏家でも普通の方でも、自分が思うようなピアノの音を作って欲しいですね。
それを理解して、私たちが技術的にやってあげられるかどうか。
これで直りました、これで完璧です…というよりは、よりデリケートな芸術性の高い要求があります。
そこに面白さもあるんですけどね。

 

ランティアで仲間が集まって作業をしてくれている

長年わたしも技術をやっているので、ここにあるピアノを復元してピアノ愛好者に楽しんでもらおうと、仲間たちがボランティアで協力してくれたて、ここができました。
全国からマニアックな方やピアノが好きな多くの方が、飛行機や電車に乗ってここまで来てくだいます。
ですから私も余計に応援していただく中で、みなさんに喜んでもらえることをやっていきたいと思います。
ピアノというのは、思った以上に本当に生活に溶け込んでいます。
ここに来られる方だけではなく、ピアノで癒やされる、あるいはピアノをもっと楽しみたい、さらにはピアノに対して新たな発見がある…というようなことを、この館ができてから、ピアノの構造やら中を見て、ピアノが素晴らしいものだと気づかれる方も多いです。
作曲家の個性を表現できることがピアノの音作りです。
ショパン・コンクールのショパンは、ワルシャワ、ポーランドの英雄です。
特にショパンはピアノ曲ばかりなんです。
ベートーベンやモーツァルトはバイオリンを始めとする弦楽器やオーケストラなどたくさんありますが、ショパンはピアノに特化しているので、ショパン対応のピアノは面白いです。

ピアノだけが完成された楽器なのではなくピアノの先の腕と指も含めて、ピアノがあるんです。